学校建設から25年を経て マリ・クリスティーヌ
私たちが初めて学校建設を行ったバーン・メーランカムスクールで、寮の先生として子どもたちの面倒を見ているパッカモンさんは二人の子どものお母さんです。長女はバーン・メーランカムスクールの中学2年生、下の男の子は幼稚園生で、子育てしながら働いています。パッカモンさん、子どもたちと一緒に 彼女は1998年に新校舎が完成した時に、この小学校を卒業して中学部に進学しました。勉強が好きで、中学卒業後も奨学金などを取得しながら高校、大学に進学し、卒業後に村に戻って結婚し、バーン・メーランカムスクールの補助教員として働き始めました。長女が生まれた後も、昼間は村の人に子どもを預けながら働き続け、子どもたちもこの学校に通っています。
私たちが学校建設を行ったことが中学部創設のきっかけとなり、勉学を続けることができたとの思いから、高校、大学では日本語を学び、漢字まじりの日本語の手紙なども送ってくれます。私たちが訪問した時には、村の状況や子どもたちの様子を詳しく伝えるなど、いつも細やかな気遣いでの応対をして下さいます。カレンの民族衣装を着て通学
彼女は教師資格を持っていないために、補助教員として、寮の子どもやカレン語しか話せない新入生の世話等、雑用係を続けるしか道がなかったのですが、正式の教師の認定資格を得るために、現在は週末に勉強を続けています。教員の資格試験は競争率が高く、これに合格しても公務員になるための試験を受けなくてはならず、公務員試験はさらに難しいのでかなり狭き門のようですが、それでも正式な教師になりたいとの思いは強く、果敢に挑戦を続け努力をしています。中学生の教室
「私は現在バーン・メーランカムスクールで働いており、生徒たちが抱えている様々な課題を知っています。この地域で生まれ育ち、民族の言語も文化も、彼らを取り巻く現実もすべてを知りつくしているので、この環境の中でも生徒たちが世の中で活躍できるように、彼らの力になりたいのです。そのために、ここの学校で正式教員として働き、地元を良くしていきたいのです。それが私の夢です。」とパッカモンさんは難しい試験に挑む熱い想いを語ってくれました。1998年に建設した バーン・メーランカムスクール校舎
1998年に私たちが学校建設した時、この学校で学ぶ生徒の中から地域のリーダーが育てば、山岳民族が抱える多くの課題なども良い方向に解決していくことになるのではないかと期待を込め、だからこそ教育が大切だと話し合いました。遠き道のりでもまずは学校建設という一歩を踏み出せばきっと光はあると。
この私たちの描いた夢が25年を経た今、少しずつ実現に向かっていることに深く感動を覚えます。パッカモンさんの希望が現実となるように祈り続けると共に、私たちの活動をご理解くださり、惜しみないご協力を下さっている皆様に心から感謝を申し上げ、これからも事業を継続していきたいと思っています。
おなかいっぱいプロジェクト
チェンマイ県ファーン郡にある保育園「バーン・ラーイ・ファーン就学準備プレスクール」の子ども達に、今年も給食を届けました。昨年も皆様にお伝えしましたが、ミャンマーの政情は依然として不安定で戦闘が激しくなっています。国連もこの人道危機の深刻化に警告を発していますが、収まる気配はありません。チェンマイ県ファーン郡と隣接するミャンマーのシャン州では、軍事化政権と民主派勢力や少数民族との対立が激化しており、子どもたちが誘拐されて少年兵にされる状況も発生しています。
子どもを守るため国境を越えてタイへとやってくる家族もますます増えています。チェンマイ市内の寺院ではミャンマー国籍の子どもの出家も認めており、寺院に保護されると僧侶となり、寝食の他に教育を受けたり、医療の恩恵を受けることも可能となるので安全が確保されます。しかし、すべての子どもが寺院の保護を受けられるわけではなく、女の子には僧侶になる道がありません。
そのような背景から、私たちが支援しているタイのNGO、APCYF(Association for Promotion of Children Youth and Family)が運営する保育園はさらに増え、全部で5か所となり現在は261名の子どもが通っています。タイに来て子どもの誘拐の心配はなくなりましたが、貧困からは逃れられません。成長期の子ども達に保育園で栄養がある食事を提供することは非常に重要です。
政治や民族の対立によって翻弄される子どもたちが、おなかいっぱい給食を食べ、心身ともに健康に成長することを願い、この事業の支援を続けていきたいと思います。(原梓)
子ども達におもちゃを
2023年、(一般社団法人)日本おもちゃ図書館財団から、タイ国チェンマイ県、山形県南陽市の2か所の施設におもちゃのご寄付をいただきました。心から感謝申し上げます。
APCYFが運営している保育園は子どもたちが急激に増えたためおもちゃが足りていません。2023年6月、ぬいぐるみ、アンパンマン・ブロック、オセロ、ルービックキューブ、幼児用計算ボード等を「バーン・ラーイ・ファーン就学準備プレスクール」の他「バーン・クワイ・センター」、「スワン・ジョイラック・センター」、「ファイ・ジャンヌ・センター」の4か所の保育園に届けました。子どもたちは大喜びで夢中で遊び始めました。
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女性たちの自立支援
タイに私たちが訪問する度に、通訳とコーディネートをして
くださる出羽明子さんが女性の自立支援のための団体を創り、仕事を始められました。新しいグループ名はNuega(ヌーガー)です。Nuegaは、アカ語で【つなぐ・つながる】という意味です。Nuegaに参加して働いている女性たちは、元ストリートチルドレンで小さい子どもがいる山岳民族の母親たちです。刺しゅうのヘアピン 長い間ストリートチルドレンの保護、自立に関わってこられた出羽さんは「次の世代のストリートチルドレンを出さないためには、女性たちが自立して、安心して子育てをし、生活ができる環境を作ることが重要だ」と考えています。ここで活動する女性の中には、シングルマザーで経済的に不安定な生活を送っていたり、1歳未満の乳児を抱えながら頑張っている女性もいます。
SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」では、すべての人は性別にかかわらず平等に機会が与えられ、女性や女の子が能力を最大限に実現できる社会を作ることを目的としています。しかし現実には、女性であるというだけで差別を受けることは世界共通に起きており、家庭内で暴力を受けるとい
うようなことも決して少なくはありません。シングルマザーは子育てをしながら働かなければなりませんが、働く場や時間が限られる場合もあり、生活ができる収入を得る事には大きな苦労を伴うことが多々あります。 刺しゅうをする女性
ここでは、女性たちが自分たちの民族の伝統の模様で作った布製品を販売する他、注文に応じて製品を作成することも行っています。出羽さんがこれまでに訪問してネットワークを持っているカレン、シャン(タイヤイ)、ミャンマーの村々からの素敵なハンドクラフトも紹介しています。
手に職をつけて自立を促すのみならず、自分の民族の刺繍などをすることはエンパワメントにも繋がっています。私たちはこれらの製品を買い取り、国内のイベント等で皆様にお買い上げいただけるように支援しています。(原梓)
子どもの性被害防止セミナー
警察庁生活安全局人身安全・少年課 報告
子ども達への性加害を終わらせることを目的に毎年警察庁が主催する「子供の性被害防止セミナー」
が11月14日に開催され、マリ代表が参加しました。
警察庁の発表によると2022年の子ども買春の被害児童数は1,461人で前年度より減少しましたが、児童ポルノ被害児童は2,053人と前年度よりも増加しています。児童ポルノの被害の学年別割合では中学生が最多となり、自撮らせのポルノが38.8%を占め、小学生及び未就学の被害者は202人で、全体の39%が盗撮でした。SNSの普及がこの被害の増加に大きく影響を及ぼしています。
テレビゲームなどで遊ぶ子どもたちにも魔の手が伸びている状況が報告されました。大人の知らないところで被害に遭う子どもが出ていることも多い現状です。 私たちは、来年度も法律の抜本的改正の要望書を政府関係者に提出する所存で準備を進めています。
AIDS孤児里親基金今年も皆様からお寄せいただいたAIDS孤児里親基金は「希望の家」に届けました。希望の家には現在、大学生から幼稚園児までの女子10名、男子16名の子ども達が暮らしています。これまでにないほどの大人数で、思春期の子どもが多いので、課題も多く難しいこともたくさんあるようです。寮母のタッサニーさんは、村に行き子どもたちの現状を目の当たりにすると何とかしなければという気持ちになり、受け入れているとのことです。 |
AIDS文化フォーラム8月4日(金)~6日(日)第30回AIDS文化フォーラム in YOKOHAMAがかながわ県民センター |
葉山小学校セミナー
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若者たちの環境美化活動(お互いさまプロジェクト)
タイでもコロナの問題は深刻化しています。国籍のない子どももおり、安い賃金で慟く彼らの生活は非常に不安定です。そんな中、お互いさまプロジェクトで支援を続けているチェンライの若者たちが、1月にチェンライ県フエイチョンプー郡のノンフォーマルエデュケージョンの校舎周辺の環境美化活動を行いました。校舎の周りをきれいにするという目的に加え、同じ境遇の仲間たちと体を動かし、日頃彼らが抱えている不安や鬱々とした気持ちを発散するという効果も期待しての活動です。
加えて、郡内の小さなパーラン小学校(全校生徒28名、ミェン族)で毛布の配布も行いました。この地方は漂高が高く冬の夜間は気温が2度位まで下がります。寒波が到来すると凍死することもあり、電気やガスなと同も来ていない村では、家族全員が囲炉裏のまわりに雙まって寝ているそうです。毛布は、この冬の異常な冷え込み中で村の人々に大変喜ばれています。(AWCユースリーダー原梓)
法改正の要望書提出
「児童買春・児童ポルノ禁止法」は1999年5月に成立し、11月から施行されました。今年でこの法律ができて22年が経ちます。これまでに、二度の法改正が行われてきましたが、被害の悪化はいまだに止めることができません。女子高校生を売り物にしたJKビジネスは、中学生や小学生にまで低年齢化している状況も見られています。 このような子どもの性の商品化を放置せず、性搾取、性虐待などの子どもの被害をなくしていくために 4月7日、ECPAT/ストップ子ども買春の会を中心とした11団体が合同で「児童買春・児童ポルノ禁止法の抜本的改正を求める要望書を、内閣総理大臣、法務大臣、厚生労働大臣、文部科学大臣、国家公安委員長あてに提出しました。私たちも賛同団体として名を連ねました。子どもをめぐる状況が少しでも良くなっていくように心から願って、この活動を続けていきたいと思います。